外壁タイルは、賃貸マンションや商業ビルなどの建築物において広く採用される外壁仕上げのひとつです。
美観や耐久性に優れる一方で、経年劣化や施工不良によって浮きや剥落、落下といった問題が発生することも。
- 外壁タイル仕上げが行われる理由とタイルの浮きの原因や兆候は何があるのかについて。
- 外壁タイルの浮きがきっかけで起こる剥離や落下とはどのような状況のことなのかについて。
- 外壁タイルの落下事故によるリスクと被害事例にはどのような物があるのかについて。
- 外壁タイルの浮きや剥落を防ぐための対策と定期的な外壁調査の重要性について。
- 外壁タイルの浮きや剥落による落下事故を防ぐために物件オーナーが事前にできることは何があるのかについて。
- 外壁タイルの浮きが原因で発生する剥落・落下事故のリスクと影響に関するよくある質問まとめ。
外壁タイルの浮きを放置すると建物の美観や安全性が損なわれるだけでなく、剥落・落下事故のリスクが高まり最終的に人身事故や物的損害といった重大なトラブルにつながる可能性があります。
外壁タイルの浮きや剥落、落下とはどのようなものなのか、その原因や影響、具体的な対策について説明していきますので、未然に防げる事故を回避するようにしてください。
外壁タイル仕上げが行われる理由とタイルの浮きの原因や兆候は何があるのか?
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賃貸マンションや商業ビルの外壁仕上げには、塗装、吹付け、タイルなどさまざまな種類がありますが、外壁タイル仕上げは耐久性や美観の面で優れた特徴を持っていることもあり、多くの建物で採用されています。
しかし経年劣化や施工不良によって、タイルの浮きが発生して剥落や落下のリスクにつながることも。
なぜ外壁タイル仕上げが行われるのか、そのメリットとタイルの浮きが発生する原因や兆候について説明しますので参考にしてください。
賃貸マンションや商業ビルで外壁タイル仕上げが行われる理由とは?
賃貸マンションや商業ビルなどで外壁タイル仕上げが採用される理由として、耐久性の高さや美観の良さといったメリットがあります。
- 耐久性に優れている
- メンテナンスの手間が少ない
- 意匠性やデザイン性が高い
- 耐火性や防音性が高い
上記4項目がよく言われることなので、それぞれについて簡単に説明しておくと、
耐久性に優れている│外壁タイル仕上げのメリット
外壁タイルは、塗装や吹付け仕上げと比べて圧倒的に耐久性が高く、長期間にわたって劣化しにくいのが特徴のひとつ。
塗装仕上げの場合は紫外線や風雨による劣化が進みやすく、10〜15年ごとに再塗装が必要になります。
その一方でタイル仕上げの場合は30年以上の耐用年数が期待でき、表面が劣化しにくいために頻繁な補修を必要としません。
メンテナンスの手間が少ない│外壁タイル仕上げのメリット
タイル自体の耐候性が高く再塗装の必要がないために長期的なメンテナンスコストを抑えることができます。
高層マンションや商業ビルでは、足場を組んで塗装を行うコストが高額になるために外壁部分をタイル仕上げする方がメンテナンス面で優れているということ。
物件オーナーにとって大規模修繕工事の頻度や補修頻度が少ないほど利益率の向上に役立ちますので、メンテナンス頻度の低さを考慮して採用する人もいます。
意匠性やデザイン性が高い│外壁タイル仕上げのメリット
外壁タイル仕上げを採用することで高級感や重厚感を演出できることもあり、賃貸マンションやオフィスビルなどで人気があります。
外壁の素材としても有能で多彩なカラーバリエーションや質感を選択できるメリットも。
建物のデザイン性を向上させることで、入居者の満足度向上や資産価値の維持にも寄与すると考えられています。
耐火性や防音性が高い│外壁タイル仕上げのメリット
外壁に採用するタイルは不燃性の素材であり、火災の際にも燃え広がるリスクが少ないために安全性の向上につながります。
タイルの厚みや構造によって、外部の騒音を軽減する効果も期待できるメリットも。
耐火性や防音性の高さは入居者の安心感にも繋がりますので、退去率の低下や入居者数の増加に良い影響を与える効果も期待できます。
賃貸マンションや商業ビルで外壁タイルの浮きが発生する原因や理由とは?
外壁タイル仕上げには多くのメリットがある一方で、施工や経年劣化による浮きの発生が問題になることがあります。
タイルの浮きが進行することで剥落や落下のリスクが高まり、人身事故や物的損害につながる可能性があるので注意が必要です。
- 施工不良
- 経年劣化
- 地震や建物の動き
- 水分の浸入
上記のような状況が考えられますので、それぞれについて簡単に説明しておくと、
施工不良│外壁タイルの浮きが発生する原因
外壁タイル浮きが発生する一番の原因は、施工不良による接着不足です。
タイルを外壁に貼る際にモルタルや接着剤を使用しますが、施工時の圧着が不十分だとタイルが十分に固定されずに浮きが発生します。
モルタルの水分が適切に管理されていない場合も乾燥収縮によってタイルと下地の密着が弱まって浮きの原因となることも。
経験豊富で実績の高い施工業者を選ぶことで施工不良による外壁タイルの浮きを防ぐことができます。
経年劣化│外壁タイルの浮きが発生する原因
外壁タイル仕上げは耐久性に優れていますが、長期間の使用によって下地のモルタルや接着剤が劣化してタイルが浮いてしまうことがあります。
外壁は日々、紫外線・風雨・温度変化の影響を受けているので、時間の経過とともに接着力が低下していっているということ。
築10年以上が経過した物件だと、外壁タイルの浮きや剥落のリスクが高まるために定期的な点検が必要です。
地震や建物の動き│外壁タイルの浮きが発生する原因
日本は地震が多い国ということもあり、建物の揺れによって外壁にストレスがかかって外壁タイルの浮きが発生することがあります。
地震の際に外壁のひび割れが生じてタイルの固定力が低下するきっかけになることも。
小規模な揺れが繰り返されることで接着層に微細な亀裂が入り、浮きが進行していきますので、地震が多い地域では点検等をしっかり行う必要があります。
水分の浸入│外壁タイルの浮きが発生する原因
外壁の目地やひび割れから水分が浸入することでモルタルが劣化して、外壁タイルの浮きにつながることがあります。
特に冬の時期は浸入した水分が凍結や膨張して、内部からタイルが押し出される現象(凍害)が発生しやすいことも。
雨水が入り込むことで接着材の化学変化が進行して密着力が低下するケースもあるので、ひび割れ等を発見した場合は十分な注意が必要です。
賃貸マンションや商業ビルで起こる外壁タイルの浮きの兆候は何があるのか?
外壁タイルの浮きは目視で確認するのが難しい場合があります。
しかし下記のような兆候が見られる場合は、早めに専門業者の点検を受けて問題がないか確認することが重要です。
タイルの目地にひび割れがある│外壁タイル浮きの兆候
タイル自体は問題なくても目地部分にひびが入っていると、内部で浮きが発生している可能性があります。
タイルを叩くと軽い音がする│外壁タイル浮きの兆候
外壁タイルは、専門業者が打診調査と呼ばれる方法で点検することが多いです。
ゴムハンマーなどで軽く叩いた際に、通常のタイルは詰まった音がするのに対して、浮いているタイルは軽い音や空洞音がするため、音を聞き分けることで浮きが発生しているか判断できます。
外壁に染みや変色が見られる│外壁タイル浮きの兆候
水分の浸入による劣化が進行することで、外壁表面に染みや変色が現れることがあります。
特にタイルの下部や目地周辺に黒ずみや白華(エフロレッセンス)が見られる場合は内部で浮きが発生しているサインだと考えて問題ないでしょう。
タイルがわずかに浮き上がっている│外壁タイル浮きの兆候
外壁タイルの一部に、タイルがわずかに出っ張っているように見える箇所がある場合は浮きが発生している可能性が高いといえます。
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外壁タイルの浮きがきっかけで起こる剥離や落下とはどのような状況のことなのか?
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外壁タイルは建物の外装仕上げとして耐久性や美観に優れている一方で、施工不良や経年劣化によって浮きが発生することと、剥離や落下につながることがあります。
タイルの浮きが進行することで接着力が完全に失われて、最終的にタイルが剥がれ落ちる剥離や、地面へ落下する落下といった危険な現象を引き起こすことも。
ここでは外壁タイルの浮きが原因となって起こる剥離や落下がどのような状況で発生するのか、そのメカニズムや影響について説明しますので参考にしてください。
賃貸マンションや商業ビルで外壁タイルの浮きから剥離や落下へ進行するプロセスとは?
賃貸マンションや商業ビルで起こる外壁タイルの浮きから剥離や落下へ進行するプロセスとしては、浮きの発生→剥離(タイルが下地から外れる)→落下(タイルが地面に落ちる)というのが一連の流れになります。
それぞれのタイミングにおける外壁タイルの状態と原因について説明すると、
外壁タイルの浮きの発生とは?
外壁タイルの浮きは、タイルが下地(コンクリートやモルタル)との密着を失ってわずかに剥がれかけている状態のことを。
この段階ではタイルはまだ落下せずに外壁にとどまっているものの、下記のような影響によって浮きが拡大しやすいので注意が必要です。
- 施工時の接着不足(施工不良)
- 経年劣化による接着剤やモルタルの劣化
- 地震や振動による影響
- 水分の侵入(凍結膨張や化学的劣化)
外壁タイルに浮きが発生することで、タイルと下地の間にわずかな隙間ができて、そこに水分や空気が入り込むことで剥離のリスクが高まります。
外壁タイルの剥離(タイルが下地から外れる)とは?
剥離とは、タイルが完全に下地から離れて接着力を失った状態のこと。
この段階ではタイルが外壁に残っているものの、わずかな力や衝撃で落下するリスクが非常に高くなります。
外壁タイルに剥離が起こることで、下記のような兆候が見られることがあるので、見た目でも判断できるということ。
- 目地のひび割れや劣化
- タイルを軽く叩くと「空洞音」がする
- タイルの一部が浮き上がって見える
- 外壁の変色やシミ(内部への水分侵入)
- 剥離したタイルが風や振動でガタつく
剥離状態になっているタイルは、少しの外的要因(風圧、衝撃、振動など)で落下する可能性が高いので、すぐに補修や修繕を検討する必要があります。
外壁タイルの落下(タイルが地面に落ちる)とは?
タイルが完全に剥離した後に何らかの力が加わると、建物の高所からタイルが落下して、地上にいる人や物に直接被害を与えるリスクが高まります。
外壁タイルが落下が発生しやすいのはどのような状況かというと、
- 強風や台風:剥離したタイルが風に煽られ、吹き飛ばされるように落下します。
- 地震や余震:振動によってすでに浮きや剥離が進行していたタイルが一斉に落ちます。
- 雨水や凍結による膨張:水がタイルの下に浸透して、冬季には凍結膨張で剥離が加速して落下します。
- 衝撃(人や物が接触):鳥が止まったり、建物のメンテナンス作業中にタイルに衝撃が加わると、タイルが剥がれて落下します。
外壁タイルの落下事故では人的被害や物的被害など、想定外の損失が発生する可能性もありますし、その後の風評被害なども考えられるので、外壁タイルが落下する前に修繕することが推奨されます。
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外壁タイルの落下事故によるリスクと被害事例にはどのようなものがあるのか?

外壁タイルは耐久性や美観に優れる仕上げ材ですが、経年劣化や施工不良によりタイルが浮き、最終的には剥落や落下事故につながるリスクがあります。
特に高層マンションや商業ビルでは、落下物が歩行者や車両に直撃することで重大な人身事故や物的損害を引き起こす可能性があるので適切な維持管理が不可欠です。
外壁タイルの落下事故によるリスクと、実際に発生した被害事例について説明しますので、同様の事故を起こさないように注意してください。
賃貸マンションや商業ビルで外壁タイルの落下事故が引き起こす主なリスクとは?
賃貸マンションや商業ビルで起こる外壁タイルの落下事故には下記のようなリスクがあるので注意が必要です。
- 人的被害(歩行者や住民への危険)
- 物的損害(車両・建物・設備の破損)
- 賠償責任・訴訟リスク
上記のようなことがありますので、それぞれについて簡単に説明すると、
人的被害(歩行者や住民への危険)│外壁タイル落下事故のリスク
外壁タイルが落下する高さや重さによっては、頭部に直撃すると致命傷となる可能性もあります。
落下物による衝撃力の一例を紹介すると、
- 高さ10m(約3階建て)から500gのタイルが落下すると、時速50km以上の速度で直撃したものと同じダメージになります。
- 高さ20m(約7階建て)から1kgのタイルが落下すると、成人男性がフルスイングしたバットと同じ衝撃したものと同じダメージになります。
- 高さ30m(約10階建て)からの落下物は、命に関わる致命傷を与える可能性があります。
賃貸マンションや商業ビルで使われる外壁タイルは1枚あたり数百グラムから1kg程度の重さがあるため、高層階から落下すると凶器と化すことはわかると思います。
物的損害(車両・建物・設備の破損)│外壁タイル落下事故のリスク
外壁タイルの落下は、人だけでなく車両や建物にも被害を与える可能性があります。
具体的にどのようなことが起こるのか一例を紹介すると、
- 駐車場の車のボンネットやフロントガラスを破損
- エントランスやテラスのガラスを直撃
- 自転車やバイクの破損
- 隣接する建物の壁面や屋根への損害
特に駐車場に停車中の車が破損した場合は修理費が高額になり、所有者とのトラブルに発展する傾向があります。
賠償責任・訴訟リスク│外壁タイル落下事故のリスク
外壁タイルの落下事故が発生すると、建物の所有者や管理者(管理会社、マンション管理組合)が責任を問われることになります。
民法第717条(工作物責任)では、
- 建物の所有者が安全管理を怠った場合、落下事故による損害賠償責任を負う。
- 「不可抗力(例:大地震)」を除き、落下事故が発生した場合は所有者側が過失を問われる可能性が高い。
建築基準法では、
- 高さ31m以上の建物では、10年ごとの外壁点検が義務化されており、点検を怠り事故が発生した場合、行政指導や罰則の対象となる。
訴訟に発展した場合は、治療費や慰謝料、修理費用に加えて、弁護士費用などの追加負担が発生することもあり、かなり高額なコストが必要になることを理解しておいてください。
賃貸マンションや商業ビルで起こった外壁タイル落下事故の事例と被害金額は?
実際に過去に発生した外壁タイルの落下事故の事例を紹介すると、
東京都内のマンションでの落下事故(人的被害)
- 事例概要:築15年の賃貸マンションの外壁タイルが4階部分から剥落し、下を歩いていた通行人の肩に直撃し、骨折の重傷を負う事故が発生しました。住民が以前からタイルの浮きを指摘していたが、管理会社が対応していなかった。
- 事故の影響:被害者がマンションの管理会社とオーナーを提訴して、約500万円の損害賠償が認められただけではなく、マンションの評価が下がって空室率が上昇しました。
商業ビルの外壁タイル落下による車両被害(物的被害)
- 事例概要:ビルの7階部分から外壁タイル(約1kg)が駐車場に落下して高級車のボンネットが大破したことで修理費として200万円以上の請求が行われました。事故後にビル全体の外壁を点検したところ、複数箇所でタイルの浮きが見つかった。
- 事故の影響:建物のオーナーが被害者に賠償金を支払うだけではなく、追加の修繕工事費として数千万円の出費が発生しました。
外壁タイルの落下でガラスが割れて隣接ビルとトラブルに発展。
- 事例概要:老朽化したマンションの外壁タイルが落下して、隣接ビルのガラス窓を直撃、ガラスが割れて事務所内の設備が破損して営業に支障が出ました。
- 事故の影響:隣接ビルの管理会社がマンションのオーナーに損害賠償請求を行い、修理費や営業損失を含めて約1000万円の損害賠償が発生しました。
外壁タイルの落下事故は、人的被害・物的損害・管理責任の問題を引き起こす重大なリスクを伴うので、そうならないように事前に対策するようにしてください。
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外壁タイルの浮きや剥落を防ぐための対策と定期的な外壁調査の重要性とは?

ここまで説明した内容を確認した人なら、外壁タイルは放置することで浮きが発生し、いずれ剥離や落下が起こることがわかったと思います。
適切な対策や定期的な外壁調査を行うことで、落下事故による損失や二次被害を抑えることもできるということ。
ここでは賃貸マンションや商業ビルなどで外壁タイルの浮きや剥落を防ぐための具体的な対策と、定期的な外壁調査の重要性について説明しますので参考にしてください。
賃貸マンションや商業ビルで外壁タイルの浮きや剥落を防ぐための対策とは?
賃貸マンションや商業ビルで外壁タイルの剥落や落下を防ぐためには、早期発見と適切な補修が重要です。
外壁タイルの落下事故を防ぐために必要なことは、定期的な点検とそれを踏まえた修繕や補修を行うことしかありません。
上記対策を講じることで被害の発生を未然に防ぐことができるようになりますので、参考にしてください。
定期的な点検を実施する│外壁タイルの浮き対策
外壁タイルの浮きや剥落は目視では判断しにくいこともあります。
そのため専門業者による定期的な点検を行って、劣化の兆候を早期に発見することが重要なポイントのひとつ。
築10年を超えたら5年ごとに外壁点検を実施すること、築20年以上の建物は3年ごとに詳細な調査が推奨されています。
高層建築物(31m以上)は、10年ごとの外壁点検が法律で義務化付けられていますので、絶対に行うようにしてください。
適切な補修・修繕を行う│外壁タイルの浮き対策
外壁タイルに浮きが発見された場合、剥落や落下事故を防ぐためにも早めに補修を行うことが大切です。
補修方法としては下記のようなものがありますので、状況に合わせて選ぶようにしてください。
- 再接着工法(樹脂注入工法):浮いたタイルをそのまま残した状態で、エポキシ樹脂などの接着剤を注入して固定する方法のこと。既存のタイルを活かせるためコストを抑えつる補修することができます。
- タイル張替え工法:浮きや剥落の範囲が広い場合、既存のタイルを撤去して新しいタイルに張り替えます。長期的な安全性を確保するために有効ですが、工事費用が高くなるデメリットもあります。
- 外壁塗装・シーリング補修:目地部分の劣化を防ぐために、シーリング材(コーキング)の打ち替えや外壁の保護塗装を行います。タイルの接着力を維持して剥落リスクを低減することができます。
外壁タイルの浮きや剥落を防ぐためには、定期的な外壁調査を行うことが重要なポイント!
外壁タイルの浮きや剥落を防ぐためには、定期的な外壁調査が不可欠です。
建物の安全性を維持して事故を未然に防ぐための調査方法やメリットについて説明しますので参考にしてください。
賃貸マンションや商業ビルで効果的な外壁調査の方法は?
賃貸マンションや商業ビルで推奨されている外壁調査は、建物の状態や高さに応じて複数の方法が存在しますので、状況に応じて選ぶようにしてください。
- 打診調査(ゴムハンマーを使用):専門業者がゴムハンマーや打診棒でタイルを叩いて、空洞音がするかどうかで浮きを判断します。比較的安価で実施できますが高層建築では足場やゴンドラが必要になります。
- 赤外線調査(温度差で劣化を検知):ドローンに搭載した赤外線カメラを用いてタイルと下地の間の温度変化を測定します。劣化部分は空気層ができるため、温度の違いで浮きを特定することができます。
- 目視点検(近接または遠隔):専門家が高所作業車やドローンを使用して外壁の劣化状況を目視で確認します。小規模な建物では有効的ですが、浮きの正確な判定は難しい傾向があります。
賃貸マンションや商業ビルで定期調査をするメリットは?
賃貸マンションや商業ビルで定期的な外壁調査を行うことで下記のようなメリットが得られます。
- 剥落・落下事故を未然に防ぐことができる。
- 補修費用を最小限に抑えられる(早期対応で大規模修繕を回避)。
- 建物の資産価値を維持することができる。
- 管理責任を果たして訴訟リスクを低減することができる。
外壁の調査や補修は、早期発見・早期対応が重要なポイントです
浮きが軽度なうちに適切なメンテナンスを行うことで大規模な修繕や事故を防ぐことができますので、定期的な検査を行って状態を確認するようにしてください。
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外壁タイルの浮きや剥落による落下事故を防ぐために物件オーナーが事前にできることは何があるのか?
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外壁タイルの浮きや剥落は、放置することで最終的に落下事故につながる可能性が高いことがわかったと思います。
そのためにも必要なことは定期検査を行って、外壁タイルの浮きが軽度なうちに補修や修繕を行うこと。
しかしそれ以外にも賃貸マンションの物件オーナーにはできることがあるので、ここでは定期検査と修繕以外のポイントについて説明します。
適切な対策を講じることで様々なリスクを回避することができますので、築10年以上の物件を管理しているオーナーの人は参考にしてください。
賃貸マンションの管理会社や修繕計画を見直すこと。
外壁タイルの剥落事故を防ぐためには、オーナー自身が適切な管理を行うだけでなく、信頼できる管理会社と協力することも重要です。
修繕計画の見直し│外壁タイル対策で物件オーナーができること。
建物の耐用年数や劣化状況に応じた修繕計画を作成して、定期的に見直すことで、修繕積立金の積み立て計画の変更や大規模な外壁改修に備えることができるようになります。
管理会社の選定│外壁タイル対策で物件オーナーができること。
外壁点検や補修の実績が豊富な管理会社と契約することで、適切なメンテナンスを継続的に実施できるようになったたり、マンション管理組合がある場合は、理事会で外壁点検の実施を積極的に提案することも対策のひとつです。
賃貸マンションに住む住民や入居者への注意喚起をすること。
住民やテナントから、外壁にひび割れがあるとか、タイルが浮いているように見えるといった報告があった場合、落下事故を未然に防ぐために重要な情報となることがあります。
そういった住民の声を無視することなく、真摯に受け止めて状況の確認をするようにしてください。
入居者向けの情報提供│外壁タイル対策に物件オーナーができること。
定期点検のスケジュールを周知して、異常が見られた場合は早めに管理会社へ報告するよう促しておく。
掲示板やメールで「外壁の異常を見つけたら連絡してください」と注意喚起するのも方法のひとつです。
危険エリアの立ち入り禁止措置│外壁タイル対策に物件オーナーができること。
タイルの浮きが見られる部分の下に駐車場がある場合は、一時的に利用を制限しましょう。
エントランスや通行人の多い場所で剥落の可能性がある場合は、万が一のリスクを考えて防護ネットの設置も検討してください。
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外壁タイルの浮きが原因で発生する剥落・落下事故のリスクと影響に関するよくある質問まとめ。
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外壁タイルは耐久性や美観に優れる仕上げ材として人気ですが、経年劣化や施工不良により浮きが発生したり、放置すると剥落や落下事故につながる危険性があります。
特に高層マンションや商業ビルでは、落下したタイルが通行人や車両に直撃して重大な人身事故や高額な賠償問題を引き起こすリスクも。
外壁タイルの落下事故を未然に防ぐための対策として建物の管理者や物件オーナーが取るべき行動についてよくある質問をまとめて紹介しますので、疑問がある人は参考にしてください。
賃貸マンションや商業ビルで外壁タイルの浮きが発生する原因や理由には何がありますか?
賃貸マンションや商業ビルの外壁タイルの浮きは、主に施工不良や経年劣化、外部環境の影響によって発生します。施工時にモルタルや接着剤の塗布が不十分だった場合、タイルがしっかり固定されずに時間の経過とともに密着力が低下して浮きが発生します。また建物が長年にわたって風雨や紫外線、温度変化にさらされることで接着剤が劣化してタイルが浮き上がることがあります。他にも地震や強風による振動が影響して建物が微細な動きを繰り返すことで接着力が弱まって浮きが進行することがあることも知っておいてください。
賃貸マンションや商業ビルで外壁タイルの剥落事故が発生した場合、誰がその責任を負うことになりますか?
賃貸マンションや商業ビルで外壁タイルの剥落事故が発生した場合、建物の所有者や管理会社が法的責任を問われる可能性があります。民法第717条では、「建物の所有者は、外壁の剥落による被害を防ぐ義務を負う」と規定されており、事故が発生した場合は損害賠償責任が発生します。外壁の点検や補修を怠っていた場合は管理者側の過失が認められ、高額な賠償請求を受けることもあります。また高さ31m以上の建物では建築基準法によって10年ごとの外壁点検が義務付けられてますので、この調査報告を実施していなかった場合は、行政指導や罰則の対象になることもあります。
賃貸マンションや商業ビルで外壁タイルの落下を防ぐためにオーナーができることは何ですか?
賃貸マンションや商業ビルで外壁タイルの落下を防ぐためには、オーナーが計画的な維持管理を行うことが重要です。まずは築10年を超えたら5年ごとに専門業者による外壁点検を実施すること、築20年以上の建物では3年ごとに詳細な調査を行うことが理想的だと言われています。点検の結果、タイルの浮きや目地の劣化が見られた場合は、再接着工法やタイル張替え工法による補修を早急に実施することが求められます。また住民やテナントに外壁の異常を発見した際の報告を呼びかけることで、早期対応が可能になります。修繕計画をしっかり立てて適切な積立金を確保することも、長期的な視点で重要な対策となります。
もし外壁タイルが剥がれかけている状態を確認した場合、どのような応急処置ができますか?
外壁タイルの剥がれが発見された場合、専門業者による補修が必要ですが、応急処置としては剥落リスクのあるエリアを立ち入り禁止にしたり、養生ネットを設置すること、該当箇所の目地を補強するなどの対策が考えられます。ただこれらはあくまで一時的な措置であり、根本的な補修を行わなければ問題が解決することはありません。すでに剥落の危険性が高い場合は、建物の利用者や通行人の安全を確保するために速やかに補修工事を依頼して必要に応じて関係機関と連携して対応を進めることが重要です。
賃貸マンションや商業ビルで外壁タイルの剥落を防ぐための修繕費用はどのくらいかかりますか?
賃貸マンションや商業ビルで外壁タイルの剥落を防ぐための修繕費用は、建物の規模や劣化の程度によって大きく異なります。軽微な浮きや剥離の補修であれば、再接着工法(エポキシ樹脂注入)を用いて1㎡あたり5,000円~15,000円程度で補修できますが、大規模なタイル張替えが必要な場合は1㎡あたり20,000円~40,000円と高額になることもあります。高層建築物では足場やゴンドラの設置が必要になり、全体で数百万円から数千万円規模の工事費用がかかるケースも。定期的な点検と早期補修を行うことで、大規模な修繕費用の発生を抑えることができますので、先延ばししないことをおすすめします。
外壁タイルの浮きを放置すると、どのくらいの期間で剥落や落下に進行しますか?
外壁タイルの浮きが発生してから剥落や落下に至るまでの期間は、劣化の進行速度や環境条件によって異なりますが、数年以内に落下するリスクが高いと考えてください。地震や強風などの外的要因が加わることで数ヶ月~1年程度で剥落することもあります。浮きが発生しているタイルは接着力が大幅に低下しており、軽い振動や水分の浸入によって急激に剥落が進行することもあるので、放置したままにせず早急に点検・補修を行うようにしてください。
管理物件で外壁タイルの浮きを見つけた場合、すぐに修繕しなければならないですか?
管理物件で外壁タイルの浮きが確認された場合、基本的には早急な修繕が推奨されます。ただ軽度の浮きで今すぐ落下の危険がないと判断された場合は、定期的な監視を行いながら適切なタイミングで補修することもできます。一度浮きが発生した箇所は時間の経過とともに悪化するため、できるだけ早めに補修を行うのが望ましいと言えます。特にタイルが剥がれかけている場合や目地が大きく劣化している場合は、速やかに対応するようにしてください。
賃貸マンションの外壁タイルの落下事故は火災保険や賠償保険で補償されますか?
賃貸マンションの外壁タイルの落下事故による被害は、火災保険や賠償責任保険の対象となる場合があります。多くの火災保険には「物件の外部からの落下物や飛散物による損害」がカバーされる項目が含まれていますが、経年劣化や管理不足による落下は補償対象外とされることが多いために契約内容を確認しておく必要があります。マンションやビルの管理組合が加入している施設賠償責任保険であれば、第三者への損害賠償が発生した場合に適用される可能性もあるため事前に適切な保険を準備しておくことが重要です。
建物のオーナーが外壁の落下事故で訴えられた場合、どのような責任を負うことになりますか?
外壁タイルの落下事故が発生した場合、建物の所有者(オーナー)は管理責任を問われ、損害賠償請求を受ける可能性が高いです。民法第717条の「工作物責任」に基づき、建物の所有者は建物の安全管理義務を負う必要があるので、落下事故による人身被害や物的損害に対して賠償義務が生じます。また定期点検を怠っていた場合や過去に異常の指摘があったにもかかわらず適切な対応をしていなかった場合は、過失が認められ、より高額な賠償が発生する可能性もあります。
外壁タイルの落下を防ぐための監視体制はどのように構築すれば良いですか?
外壁タイルの落下を防ぐためには、定期点検だけでなく日常的な監視体制を構築することが有効です。例えば管理会社や清掃スタッフに外壁の異常がないか定期的に目視確認を依頼するとか、入居者にひび割れや剥離があったら報告するように促すなどの掲示を行う方法があります。高層ビルや商業施設では、監視カメラを活用して建物の周囲をチェックして、落下リスクがある部分を早期に発見することが効果的です。
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